麗しの五月、ついに今回の歌仙も、まんびとなりました。
輝くばかりの緑の中、芭蕉の館の句座に十人の連中が集ってくださいました。
しゃしんは近くのあやとり場所から眺めた、赤いパラソルの川床です。渓谷も、山々も翠緑。
名残の裏、最初の句は無季の長句です。
里山へ鳥やはらかく降り立てば 西
すてきですね。新鮮な感覚の一句です。季語は入れていないにもかかわらず、何処か春の兆しが動くような微妙な感覚があります。名残の裏、五句目の花の定座を意識してのはこびでしょう。素晴らしいです。
腰折りながら農具を揃へ 上出
この付けも絶妙です。無季で季語を入れないとはいえ、春が近づくのを待ち望みながら,春耕の農具をそろえる。
里山の暮らしの息吹がかんじられます。
そして三句目、ついに春がきました。
入口も出口も同じいぬふぐり 佐藤
作者は洞窟の入り口&出口の犬ふぐりの花の光景と、お話でしたが、、たとえば、南画に描かれたような小さな山家の光景とも見ることができますね。前句の農具をそろえる人の棲む里山の家居とも。
坊守も出て雪囲いとる 上出
春遅い山里の嬉しい光景。いよいよ雪の心配もなくなって本当に春が来たという明るい気分が伝わってきます。ユーモラスでもあり、楽しい光景です。
さて、いよいよ一巻の掉尾を飾る花の定座です。
城下町うづみつくしてはなの雲 梶
春風駘蕩春爛漫の花の春。一幅の絵のような城下町の花の景。美しく、一巻の満尾を寿ぐ気分と一抹の哀感。
花の句はこうありたいという見事な一句をいただきました。
さて最後の揚句は
晩春の小津原節子かも 杉浦
いや~、他にも一巻の満尾に込めた余情のある句も、さらりと受けた句も、あったんですよ。
しかし、こんかいは発句がまず「蛇体のしぐれ」なんて異様なものから始まっていますから、最後も、ちょっと揚句にしては風変りなこの句をいただきました。
小津安二郎監督と一世を風靡した女優原節子。お二人の間になにがしかの思いがなかったとは言い切れないでしょう。心の内は、ともあれ、社会的には最後まであくまで監督と女優だった二人のごとく…。
ちょっと風変わりで、かつ恋多き今回の歌仙の面白いおわりかただとおもいます。
あー楽しかった!連中の皆様ありがとうございました。
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