やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

五月連句

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緑の美しい季節。芭蕉の館の庭の苔も生き生きしています。山野草展がおこなわれていました。とても珍しい品種もありました。

さて、五月の連句は、名残の表の七句目からです。祇園ばやしから淀川のくらわんか舟の賑わいへと続き西国情緒を楽しんで六句目は「明かりを消してその時を待つ   正藤」という意味深な句でした。

七句 送り出す背にひときわ虫の声  中井。


虫の声の闇へ送り出す背中。わけありな雰囲気です。次も秋の句をお願いしました。

八句 蕎麦の花より雲湧き出づる  西


前句の闇の中から一転して明るく爽やかな大景です。信州の山々か、高原のような雰囲気ですね。雲の湧き出る蕎麦畑のお蕎麦美味しそうです。信州と言えば田毎の月。そろそろ月の句をおねがいしましょう。


九句 味真野の比翼の丘や月に暈  笹次


初折の月は煌々たる名月でしたので、今度はやや趣のちがう月の句。
味真野は万葉集にもある地名です。継体天皇の有縁の土地で、花筐の伝承など地元には逸話がいろいろ残っています。悲恋の歌なども多いとか。今宵の月に暈がかかるのも、むべなるかな(金色夜叉かい!)。
また福井県も蕎麦処でゆうめいです。越前蕎麦美味しいですよ。
さて、月の句の跡は、無季の句をはさみましょう。

十句 切子グラスにワイン溢れて  正藤

無季とは言え、月を眺めながらワインの月下独酌という雰囲気が趣味人っぽい。


さて、あっという間に名残の表ももうおしまいになるところ。冬の句をお願いしました。

十一句 咳けばショウウィンドウに己が影   梶


 高原から万葉の故地そして室内から今度は都会の景色。いかにも師走近い雰囲気です。年の瀬へ向けての町並みの喧騒の中、ふとショウウィンドウに映った自分の貌が孤独感を強める。都会の喧騒の中の孤独。冬らしい。

十二句 毛皮羽織れば街の華やぐ  西


前句の孤独を、きらびやかな町の明かりの中へ繰り出すゴージャスな美人の姿に詠み替えています。
うまいものです。
あっというまになごりのうらもおわりです。 

今回も名吟がたくさんありました。例えば月の句
味真野の句のほかに


鍵穴を探してゐたる雨月かな

湯上がりのほてりを冷ます無月かな

漁火の能登へ連なる後の月

ワイパーの刻むリズムや雨月なる

姥捨ての話に及ぶ後の月

九頭竜の流れゆるやか十三夜

地すべりの跡ありありと後の月

正座して文机低し居待月

南国の街は不夜城月天心

三日月の牙に鋭く引っ掻かれ

これだけの句が、ものの十五分であつまるんです。凄いですよね!
選句に苦しむのもお分かりいただけますでしょう?
来月はついに名残の裏に入ります。