やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

十一月の連句

イメージ 1

十一月の連句

今年の紅葉はきれいですね。山中温泉の綾取り橋から眺める山々も渓谷も紅葉紅葉です。

さて先月は、名残の表に入りました。無季の句

病室に遺書はないかと探したが  西

ははのへそくりこんなにあった  梶

この世のすべてを盛り込む歌仙には、生老病死も避けて通れません。病室にさえ遺書を探した果てにみつけたものは。

付け傑作でしたね。”面白うてやがて哀しき“つけでした。

さて今月はどうなるでしょう。まずは秋の句をお願いしました。


七句目 独り居を二百十日のこともなく  笹次


孤独な日々もたんたんと過ぎていく。時とはやさしいいやしなのか、それとも冷厳な裁きなのか。


八句 ぽとりと落ちる線香花火  西


哀感のある付け。せんこうはなびはあきのきごなんですね。輝いたかと思う間もなく落ちてしまう線香花火の丸い火。かなしい。なんでお無いことだけれど。
さて次はちょっと早めだけれど月の句をお願いしました。月は早めでも良いんです。


九句  ビルの階数えバス待つ星月夜  梶弘美


ちらほらと夜業の灯の見えるビルの階を数える。何でもないバスを待つ仕草のようでもあり、どこか人なつかしさをかこっているようでもあり。臨場感のある句
このかせんでは冬の月も秋の月も出ているので、星月夜にしてくださったのもいい感じ。ビルに明かりの窓が見えるのと空にばらまかれた星々も何となくにあうようなきがします。


十句   枯葉を踏めば今日の音して  中江


詩情のある付けですね。いつもの道かもしれませんが、今日の枯葉には、今日の音がする。

レミ・ド・グールモンの詩をおもいだします。

「落葉」 レミ・ド・グールモン


シモーヌ 木の葉の散った森へ行こう、
落葉は 苔と石と小径を被うている。

シモーヌ 君は好きか 落ち葉ふむ足音を?

落葉の色はやさしく 姿はさびしい、
落葉ははかなく捨てられて 地べたの上にいる!

シモーヌ 君は好きか 落葉ふむ足音を?

暮れ方 落葉のすがたはわびしい
風が吹き散らすと 落葉はやさしく叫ぶ!

シモーヌ 君は好きか 落葉ふむ足音を?

寄りそえ 僕らもやがては 哀れな落葉であろう。
寄りそえ もう夜だ そして風が身にしみる。

シモーヌ 君は好きか 落葉ふむ足音を?

堀口大学訳)


十一句 燈台に触れて失せゆく 夕陽影  正藤


仄かな秋の夕陽影。燈台に触れてみるみるきえてゆく。哀愁ただよいます。


さて、らいげつは名残の表の最後の句をつけ、ついに名残の裏へとすすみます。