やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

時雨の巻き

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今月からまた歌仙を始めました。会場は同じ山中温泉芭蕉の館です。
毎回私が発句を提出するのが、ちょっと、面はゆいような、飽きたような。

時雨の巻き

 やはやはとしぐれの蛇体山を巻き   橋本


  結論出して北窓塞ぐ  佐藤

 トランプが廊下の奥に立っていた  梶

   かけこみ寺の磴の百段     笹次


 得体のしれない不気味さ漂う発句を受けて、脇句、きりっとした生活者の視点が心地よい。この作者の感覚の鋭さにはいつも感心します。

三句目は思わず吹き出しましたね。もちろん渡辺白泉の「戦争が廊下の奥に立っていた」という有名な句のパロディーです。
まれにみる接戦の大統領選挙に、アメリカ国民が出した結論ですね。次期大統領がトランプ氏!世界中が驚きました。

 脇句の「結論」を展開して、まさに2016年11月の、今でなくては、の時事句です。うまい。面白い。

 排他的なナショナリズムの傾向が世界を席巻してくるようで怖いですね。その先は渡辺白泉の句のように、ある日あたかも突然のように出会いたくないものと、廊下の奥で出会っちゃうことになるのでしょうね。

グローバルな視点の句の次は、パッと転じて駆け込み寺。百段を駆け上がったら息絶えちゃいそうです。
ともあれこれも大いなる決断ですね。全体に、決断し心を決めるというような流れで進行していますね。


 さて、初折、5句目は月の定座です。おりからのスーパー・ムーンを題材にしたくも多かったのですが、穏当にこの句をいただきました。


鉄橋を渡るや忽と後の月  梶


 鉄橋を渡る。足元ちょっとこわいですね。それで枕木やその下の川ばかり眺めることになるでしょう。渡り終えてほっと見上げる空に後の月。
忽の字のコツという音も良いですね。
この日はお集りの連中の皆様がそれぞれ御用事で次々席を立たれ、「そして誰もいなくなった」状態で歌仙を巻いたんですが。初折最後には私を含めて三人になっていました。
 それでも面白い句をいただきました。

   年の数ほど葡萄の粒を  梶

召し上がったんでしょうか。お元気で若々しくていらっしゃる作者は八十粒以上召し上がられることになるとか。
正岡子規も太鼓判の健啖ぶりですね!

さて芭蕉の館での河川の会ももう三回目。だんだん手馴れてきて二時間ほどで初折すみました。
来月はどこまで行けるでしょうか。楽しみです。
晩秋で、もう二句いってみましょうか。