上絵の窯を出しました。赤絵や色絵でにぎやかです。それで錦窯とも呼びます。
天地のうららや赤絵窯をいづ 水原秋櫻子
上絵の窯を出すたびに思い浮かべる一句です。新しく生まれた器を寿いでくれるようでうれしいので。
赤の発色はどうだろう。色絵は流れ落ちていないだろうか、と何度焼いても心配は尽きないのですけれど、は今回はまあまあみたいです。良かった。
秋の日を浴びて、窯から出したばかりの器がチ と啼きます。窯の外の大気に触れて、急速に冷えるためでしょう。微かな幽かな音です。
温度差大きくて急激に冷えると、冷め切れなども起こりますので、本来は楽しむべきではないのかもしれませんが、儚い音がかわいくて。青磁など貫入の多いものはかなり鳴りますね。
寒くなってくると赤絵に目がゆきます。赤の色合いには、自分で言うのもなんですがかなり工夫しています。
とはいうものの、人間の工夫など、いわば表面で、つまりは原材料が、ものを言います。昔ながらの天然材料は手に入れにくくなりました。国内の赤の原料の産地も採算が取れず、とっ くに廃業してしまいました。私は何十年も前の事ですが、運よくまだ多少流通していた最後の日本産の赤を、入手できたんです。いらい、大事に大事に使ってきたんですが、ふと気が付きました。私だって、後そんなに長くは仕事していられないのだ、と。
それなら、思い切り使ってやろうって。
今後は赤色大盤振る舞いで行こうと決めました。赤塗埋め大皿でも作ってやろうかとわくわくしているところです。
皿に龍五頭を所望されし春 おるか
赤絵の竜でした。来年は赤絵虎五頭でも描いてやりましょうか!