我輩はミケ。猫である。
残暑というもオロカな暑さの毎日である。しかし早朝はさすがに爽やかになった。
蝉の声の中に、かすかに鈴虫やチチロの声が混じる。
そういえば、蜩の朝の太陽賛歌が、今年は聞こえないのはどうしたわけだろう。ミンミンやツクツクボーシはやかましいほどなのに、カナカナがないとは。
やさしいもの、風情のあるものから消えてゆくのがこの世か。
壁に我輩の影がセピア色だ。セピア色があくびを噛殺している。
空蝉に溜まりし雨を舐めてみる ミケ
オルカは、我輩が、わざわざ泥水を舐めるといやがるが、風流を理解しないのは情けないものである。
我輩は、濁りの中に、もののあわれを味わっているのである。