午後の光が、仕事机の上の小壺をかがやかせています。高さ5センチほどの小さな塩壺。お塩はすぐしけってしまうので、こういう小さな壺に分けて食卓に出しています。 小さな壺の又小さな凸凹に空の青が映り込んでいる。その遥かな青に驚きます。
磁器の色合いは、屡々、空の色に例えられます。汝窯青磁の柔らかな青を伝える「雨過天晴」などは雨の後の空の一瞬の輝きをとらえて優美な呼び名ですね。そして、おそらく春の空でしょうね。
うでまくら汝窯の空のうぐひすや おるか
空が雨過天晴だったので。だらけて鶯を聞く春の日。
磁器のきらめきは、クリスタルガラスや宝石とは違う、どこか濡れた輝きです。
暗い部屋の中、食卓の上の磁器のうつわたちが、外の明かりを映して、露を宿したようにきらめきあっていることがあります。蛍のように器たちがキラキラと会話しているようです。
色絵の部分は、七宝とよく似た成分ですから、明るい感じです。空に例えるなら日照雨の通った後、とか。
日照雨(そばえ)して木箱のなかの俑の春 おるか
俑は唐時代のものが有名で、おそらく副葬品として作られたのだろうと言われています。陶時代の文物を映してラクダやシルクロードのあたりの恰好の人々など、さまざまなものがあります。おでこに梅花の描く当時のおしゃれをした舞姫たちの表情は明るく見えます。木箱の中にいたのも舞姫。琵琶(?)を抱いて微笑んでいました。