手前のお皿は「五月の薔薇」。さわやかな感じを演出してみたくて、中央の葉っぱにわざと白く抜いた部分をつくりました。びちっと塗り込めるより、なんというか「抜け感」が出るかと思って。その向こうは「蔓薔薇ひし形皿」。
そして季節がすぎてしまいましたが、「早蕨」汲み出し茶碗です。万葉の
岩走る垂水の上の早蕨の萌え出る春になりにけるかも 志貴皇子
の、歌のイメージで。
志貴皇子の歌っていいですよね。この歌も春になってびワラビを取るたび思い出します。
もっと向こうは荷葉形小付け。
今回は上絵と下絵を併用した器が多くなりました。
磁器の文様を描く技法に上絵と下絵があります。下絵は素焼きの生地に絵付けしたもの。染付や鉄絵、釉裏紅などがあります。描いた後に釉薬をかけて本焼きをします。つまり釉薬の下にあるから、下絵なんです。
焼きあがった釉薬の上にもう一度 色を焼き付けるのが上絵。釉薬の上に描かれているってわけです。
五月の薔薇のお皿の手前二つと一番向こうが下絵。染付の薔薇。両側の黄色と水色が釉薬の上に色を乗せた上絵です。
早蕨の御茶碗の茶色に見えるのは錆絵、鉄で描いた下絵です。赤やフキノトウの萌黄色は上絵です。
写真の奥の方にある大皿などは、下絵の染付だけで描いてあります。
上絵も下絵もそれぞれ様々の技法やスタイルがあります。新味を求めて工夫もしますが、そうしていると逆に思いっきり伝統的なものも作りたくなったりするんですよね。