やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

歌仙「初茜」の巻、満尾

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今年の一月に始まった歌仙「初茜の巻」
今月でめでたく満尾となりました。
それでは名残の表の続きから
先回は九句目、こういう句でした。

宇宙への無限の旅や夢枕  松浦

  お茶漬けの味こころに沁みて  平井

宇宙への旅も、あたかも邯鄲一炊の夢ごとく、我に返ってしみじみと味わうお茶漬けの味。
なかなかの付けです。さて次は月の座です。名月がすでに出てしまっているので、後の月か、何かをお願いしました。


 私を見ており月の影自身   弘美

膨大な数の月の句が詠まれているなかで、これほど内省的な句も少ないでしょう。
月の光に長く伸びた影が、私を見つめ返してくるようだ。影を見る句はあっても、影に見られるとは、初めて見ました。すごい。

   紅葉はさみて日記を閉じぬ   橋本

さて愈々名残の裏、大団円へとむかいます。


名残の裏

一句目  廃村の空は三角冬隣   梶

 
 秋の句を三句続けたくて晩秋の句をいただきました。しかし、振り返ってみると、三角、すでに出てますね。
まぁ、かなり離れていますから。 三角の空と冬近い空気感が良く似合っていると思いました。


二句目   芭蕉曾良の別れし湯町   梶


 あらら、同じ方の投句をいただいてしまいました。古式ゆかしく出勝ちで歌仙を巻いておりますので、こういうこともあります。

 廃村の山里から湯の町へ。ここ山中温泉芭蕉曾良の分かれた地ですので、両者の別れと歌仙の終わりの近い気配とが交錯しています。


三句目  良く晴れて若き芸妓の通りけり   中井


芸妓の姿は湯の町にやや付いているかともおもいましたが、良く晴れた街を行く姿は、明るくしゃんとしていますね。颯爽と気分の良い一句。無季ではありますが寒晴れのような空の高さが感じられます。次の春の句への絶妙の流れ。

  米研ぐ水の温んでをりぬ   佐藤

水ぬるむという季語を見事に自家薬籠中の物にしています。米をとぐ水の仄かな温みを感じ取る感覚の鋭さはこの作者ならでは。
そしてついに最後の花の定座です。


  桜咲く御転婆娘嫁ぎゆく   松浦


新鮮で、恋多き歌仙にしましょうといってはじめたこの巻もとうとう満尾。いろいろありましたが、落ち着くところに落ち着いた、まさに御転婆娘の嫁ぐがごとし。「咲く」と「嫁ぎ行く」と動詞が重なるのが多少気にならないでもないですが、元気で良いじゃないですか。
さて、挙句は芭蕉の館館長にお願いしているんですが、館長さん、この日はイヴェントでお忙しくていらっしゃって席を外されたんです。
館長さーん、挙句おねがいしますよー!