やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

金時草パープル

イメージ 1

グラスの中のこの華麗な紫色は、ワインではありません。

加賀野菜の一つ、金時草のゆで汁です。

臙脂に菫の入ったような綺麗な紫なので、つかの間、色を楽しんでいます。

苦いわけでもありませんが、やや青っぽく、飲み物にはなりませんでしょう。この色を生かす調理法があったら知りたいものです。

 よく「早春には黄色の花が多い」、と言いますが、、行く秋には紫の花が目につきます。紅葉の縁に滲む紫は、艶なおもむきです。
昔の人も菊の花などの萎れ初めて紫がかる姿を愛でて、いましたが、儚さと相まって一入の味わいですね。

伊勢物語八十一段に「神無月ののつごもりがた、菊の花うつろひさかりなるに、」とあります。「うつろひさかり」うつろうことの盛りという矛盾表現がこの時代にすでに確立していたんですね。
滅びゆくものの美というのは格別です。

 そういえば、この伊勢物語八十一段は、源融という、光源氏のモデルの一人ともいわれる一世の風流人の邸宅での一夜の宴のお話です。「源氏物語の六条院のモデルでもあった、贅を尽くし興趣の限りを尽くした大邸宅は主の死後すぐ荒れ果てて、諸行無常の代名詞みたいな扱いを受けています。
しかも融さまも荒れ果てた屋敷に幽霊となってさまようので有名になってしまいました。美しいものを好んだ人が、見る影もない庭を眺めて何を思ったか、それとも幽霊の目にはかつての華やかな光景ばかりが移っていたのか、おもえばあわれです。

美への憧れは、もっとも深い妄執のひとつかもしれませんね。

  落暉へと風に放たむ草紅葉  おるか