やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

むらさきの菊咲きイチゲ

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やっと暖かい日がめぐってきて庭の草花もようやくつぼみを擡げました。

川べりに真っ白なイチゲの群落がまず咲き始めて、少し遅れて、庭の紫のイチゲが顔を出します。
神秘的な色です。その芽は濃い紫、芽だちのときは細い黒い指のように怪しげです。
それを見るたびに、子供のときに読んだリルケの童話を思い出します。

うろ覚えですがこんなお話でした。
「花を育てるのを楽しみに暮らす老夫婦の庭の隅に、ある年、植えた覚えもない芽が生えてきた。黒い芽だった。あまり大きくなろうともしないその芽に老夫婦はしだいに惹かれ、いつしかその芽だけを世話するようになってしいった。そしてある日それは、ぽっかりと青い花を咲かせ、老夫婦は、死が咲いたことを悟ったのだった。」

不思議な後味の作品でした。庭の紫の芽と花を見るたびおもいだされます。
死はそんな風に世話して育てるものなのかな。そうすれば、その花はきっと甘美な香りがするのかもしれませんね。

紫色の菊咲きイチゲ、その花に香りはありません。春の山草にしては毒を秘めた趣が好みなの。