やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

仙翁 枯れる力

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枯れた泰山木の蕾。こげ茶色のビロードのよう。卵より、やや軽い不思議な重さ。
あの天上の香りは消えてしまったけれど腐敗臭もない。手にとって眺めているとだんだん美しく見えてくる。
枯れてゆく力ってあるんだな。
真紅の仙翁の花も、縁が萎れかけて、それが一味ニュアンスを増して見える。

古今集などでは白い菊の花の萎れかけて花びらの先に紫がかった気配が漂うのを「うつろひ盛り」と呼んだりしてことのほかめでていますね。

 秋をおきて時こそありけれ菊の花うつろふからに色のまされば  平 定文

等等歌にも歌われています。源氏物語にも「御前の菊、うつろひはてて盛りなるに」と、菊の花はもっぱら末枯れた風情を賞美しています。

手入れの行き届いた庭よりも、廃園は一入風情があるし、焼物も、使い込んだ古色がたまりません。
「うつろひ盛り」の美はその底に異形のものを秘めているからいっそう蠱惑的なのかもしれない。

 仙翁の枯れ登り窯攻め焚きに  おるか