やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

十一月の俳画

 

 風があるとも見えないのに、色づいた葉がいっせいにはらはらと散り始めることがあります

 宮沢賢治のお話「いちょうの実」では銀杏の実の子供たちが、ある日、不意に今日が旅立ちの日だ、と気づいて「さよなら、さよなら」と言い合いながら一斉に散ってゆきます。

目に見えない何者かが、木の実や枯葉に、時が来た、としらせたかのように。

 

 日本中の神様が(諏訪は別ですが)旅に出る神無月。木々の間で、なにかがささやいたような気がする。山歩きの人の話し声だったのでしょうけれど。日々あくせくと何かに追われる現代人の私には見えなくなってしまったもの達のささやく声が遠ざかってゆく気がして、紅葉かつ散る中にたちつくす。

 猫さんたちが、壁などをじっと見ていることがありますが、彼らには、旅ゆく寂しい神様たちの姿が見えているのかもしれませんね。

 

 ささめきの木の間に離る神無月  おるか

 

「神無月」は ほんとは「神の旅」にするつもりだったんですけど、うっかり書き間違えちゃった。