明日はもう立夏。緑のまぶしい時節です。木々を見上げると枝の向こうの空が恐ろしいほど深い。
山里は山菜の時節到来、のはずなのですが、ことしは、なぜかワラビやゼンマイが不作だそうです。自然環境が今までとは違ってきている気配が、何かと感じられます。そこにあって当然だと思っていたものが、いつしか消えてしまっている。仕方ないことかもしれませんが、やはり心淋しいものです。
さて、気を取り直して、五月のランチ。
手前は、多分今年最後の筍ご飯。とシジミのお味噌汁。赤絵の碗の外側は子獅子、内側には稚竜です。塗り碗は佐竹康宏さんの。
中央の魯山人ぽいお皿は真鯛の御造り。魯山人風は実はお得意なんです。魯山人の焼き物の師匠挌、須田菁華さんのところで修業させていただきましたからね。あまり、もろに写すのは避けていますけど。
左側の小さな蕎麦猪口は線香花火紋様です。線香花火って哀愁があって好き。
ありあわせのものを小さめの向付けにもり、四角い大皿に卵焼きと蚕豆。
豆は何でも好きですが、蚕豆は別格です。蚕豆の大きな莢を割ると、フワフワの柔らかな真っ白いお布団の中で、蚕豆ベイビーズが眠っています。その中は静かで涼しく、蚕豆お母さんの子守歌が聞こえるみたいな気がします。そんな大事なそらまめを取り出して茹でてしまうのは、ものすごくひどいことをしていると思わないではいられませんが、でも大好きだから、食べちゃうの。
角皿の文様は、傘をさした人物とささない人物が二人並んだ図柄、地獄天国紋様と呼びならわされているものです。どこが地獄なんですかね。
その右側、濁し手の菓子鉢に柏餅。実は灰釉の配合少し多めで溶けて流れてしまった偶然の濁し手なんですけど。わびた風情が気にったので自家用にしています。同じものを作れと言われてもできないです。
さて器を並べて、新緑に乾杯!
あー鶯が泣いている。春先よりは随分上手になりました。名歌手 鶯にも乾杯!
秒針のきらと目を射る新樹のなか おるか
鶯にしかられてまた句を選み おるか
橋本薫句集「青花帖」より
2020年五月四日