やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

赤い部屋

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京都市美術館の「エルミタージュ展」行ってきました。

マチスの「赤い部屋」が見たくて。

 どうしても見たい絵三点を挙げるとすれば、この「赤い部屋」とグレコの「トレドの町」。もう一つはアフリカの岩絵の巨大宇宙人かなぁ。そうそう決められないないけれど、ともかく憬れの絵と対面してきました。

 この絵がはじめは緑に塗られていたのは良く知られています。
 窓の外の風景はあざといまでに平面的だけれど、満開の白い花咲く木々。春なんですね。すると、部屋の中で生真面目な様子で果物を盛り付けている女性は、近代のプロセルピナというわけでしょう。部屋を這い回る植物の装飾文様と一体化した色の服装をしています。

 ボッティチェリの「春」では華麗な衣装をまとっていた春の女神も現代では質素な労働着みたいな服で春のしつらいというお仕事にいそしんでいます。

 部屋が緑だったら、もっと春らしかったかもしれませんね。しかし赤に塗ったのは何故でしょう。模様の植物も枯れて固まったようで、生き生きしたところはありません。地下世界を這う古い根っこのようです。
 赤い部屋のプロセルピナはまだ閉ざされた部屋の中で半分死んでいるのかもしれない。窓の外のわざとらしい春と切り離されて。
 そう、彼女は再生を待つ春の子宮の中にいて、まだ「準備中」というわけです。
 しかし赤は生命の色、ロシアでは「赤い」は「うつくしい」というニュアンスもあると聴きました。再生を待つ命の部屋で静かに準備にいそしむ春の女神、。寒い国ロシアの人たちがこの絵をどんなに愛したかわかる気がしました。