やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

夏館

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 我輩はミケ、猫である。

 我輩は六月の晴れた日を愛する。人間にはちょっと暑くても我輩にはちょうどいい気候なのである。適度な湿気も我輩の絹の毛並みをいやましにしっとりさせてくれるのである。
 網戸に濾されてやわらかくなった風に残りの冬毛を飛ばしながら、麻座布団にまどろめば、葉擦れの音と緑の香りが降って来る。まだ蝉が鳴かないだけに静かである。

 そこはすべて調和と美
 豪奢、静寂、そしてえーとvolupte'ってなんと訳そうかにゃ~。ま、あたりまえだけど快楽(けらく、と読んで欲しい)にしとくか。
 
ともあれボードレールの詩「旅への誘い」にえがかれた、詩人の夢見た「そこ」の風光は我輩の身の回りに現成しているのである。
 我輩がボードレ-ルを好むのは、彼が猫好きだからというのではなく、描く世界が実に猫好みだからなのである。南国的な麝香の香り、沢山のクッション、そして毛皮と宝石。これらすべて猫族のの世界でなくてなんであろうか!!!
 おっと我輩としたことが、ちょっとばかり暑くなってしまった。さて昼寝昼寝。

 沙羅の花におわぬ庭のうたたねは夢もわが身の香に籠もりけり  ミケ

勿論、古今集

 たちばなの匂ふあたりのうたた寝は夢もむかしの袖の香ぞする

を参考にしてみた。パクリなどと下品なことをいってもらっては困るのである。
ベランダの向こうに沙羅の花が白い顔をのぞかせている真昼である。