やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

朴の花の満開の下

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莟も、多少残っていますが、、どうやら今がこの朴の木の、花のピークらしい。
純白の花の中にあでやかな紅の蘂をのぞかせて、天頂にひらく朴の花。開き初めた花のふくよかな曲線は完璧といっていい。

 「桜の花の下には屍体が埋っている」と梶井基次郎が書きました。あまりに絢爛と咲き誇る桜に。返って禍禍しいものさえ感じてしまうのは、誰しも思うところなのでしょう。

 それにくらべて、朴の花はひたすら天上の花。何よりもその香りの高貴なこと、この世のものとも思えません。
 日本海側特有の長い日暮れを、朴の花の香りの降って来るベランダに坐っていると、「このまま永遠にこうしていられたら」などと思ってしまいます。
 しかし、それは、ありえないこと。朴の花はすぐに、はらりとちってゆきます。

  朴散華たちまち知れぬ行方かな  河端芽舎

 河端芽舎の句にも、うつろいやまないこの世界への惜別の思いが籠もります。完璧に美しいものさえ、次の瞬間ちってゆく。いや、朴の花ばかりでなく、全世界が御仏への散華なのではないか、という
宗教的荘厳の気配さえ漂っています。

 やわらかな朴の葉は気づかないような風にも揺れやみません。ひょっとするとお前も散るのがこわいのか、まだ若い朴の木よ。