西原天気さんのはがきはいく第四号。
梅雨空から、軽やかに舞い込んできました。
地下鉄にゐると金魚になってゆく 天気
創刊号にも
地下街は光に満ちて水中花 天気
という句がありました。作者の地下感覚に惹かれます。
地下という空間は今日、当たり前のように生活の中に入っていますが、やはり何がしか反自然というか、感覚にひっかかるものがあります。
都市の地下街はまさに迷宮をなしています。神話の中ならそんな地下迷宮を抜ければ、冥府を抜けた再生の英雄になれるところでしょう。しかし、神無き現代では「金魚」という、寄る辺無くかわいいものへの変身が作者に許されていたことなのですね。
創刊号の句にも地下の水に閉じ込められた花に変身を促す光が射している。
こんなことを書くと「絶対に重くれてはならぬ!」と決意している作者の作品に、いらぬ御託をならべてしまったのかもしれません。
ハンカチを干していろんなさやうなら 天気
かはほりの漂ふチークダンスかな 天気
ちょいもの哀しくちょいレトロ。梅雨雲の合間に一瞬射して消える光のようなあかるく淡い哀感が、触れれば消える儚さで漂っています。