やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

我谷盆(わがたぼん)

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 紅葉の上を時雨が通り過ぎる、そんな北陸らしい空模様の日でした。我谷盆の展覧会を見てきました。工芸家黒田辰秋が「民芸木工の典型」と賞し、白洲正子はじめさまざまな方がその風合いに魅せられて一文を草している我谷盆。ここ加賀市山中の我谷で作り出されたものなのです。このあたりでも古いものを眼にする機会はなかなかないので嬉しい企画でした。

 山中の温泉街を抜けると山道は急に険しくなって、我谷、風谷と谷のつく地名が続きます。その奥に九谷もあります。岩魚釣りに谷筋をたどったものでした。いまではダムができて我谷の集落も水底になってしまっています。山里の暮らしの中ではぐくまれてきた我谷盆。ひといきに抉った跡の巧まざるデザインがまさに用と美を兼ね備えています。大好きなお盆です。


 我谷盆には栗材が主に使われているそうですが、写真奥の文房具を載せているお盆は桐が使われていて驚くほど軽い。手前の濃い色のはややどっしり。我谷ぼんは筋目を立てにおくのが普通ですが、このサイズなら横置きも一興です。
 暗い色に染付が映えます。食材も地物で白山豆腐の生姜焼きに春菊おひたしです。


  さだまらぬ時雨明かりや我谷盆  おるか