やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

加賀梨

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 加賀は人も知る梨の産地です。春の、梨の花咲く夜は一面の梨畑に誘蛾灯が灯って幻想的です。中国の人は梨の花を好むとみえて、あの白い花を楊貴妃の泣き顔に譬えていますね。たしかに山桜のように若葉の中に花房がついて、その葉がまた梨色から紅色までカラフルで、なかなかきれいなものです。

 品種もさまざま。今出回っているのは豊水という巨大な梨です。
御覧のように八寸皿が半個でいっぱいになってしまいました。
 梨独特のジャミジャミした食感が涼しい。ヤマナシのような野生の実からここまで巨大な果肉を結実させるまでには品種改良やら育成方やらどんなに手間がかかったことでしょう。人間の食欲ってすごい。

 ヤマナシといえば宮澤賢治の童話その名も「ヤマナシ」を思い出します。一度読んだだけですが、サワガニ(クラムボンって名前がかわいい)の親子が月夜に川を流れてゆくヤマナシの実を追ってどこまでもどこまでもゆくラストは忘れられません。青い月の光に照らされた冷たい水の底を自分も覗いていたような気がします。
 サワガニは「ああ、いい匂いだなぁ」と言っていました。どこまでも追って行きたくなるようなそんなにいい香なのか、とヤマナシの香りにずっとあこがれていましたが、先年たまたま嗅ぐことができました。どうってことなかったです。きっとクラムボンの川に落ちてきたヤマナシは爛熟して天然のリキュールを醸していたのかもしれませんね。


 みんな夢皿の藍透く梨食めば  おるか