窯場の壁に沿って、ホオズキが色付きました。ホオズキは茄子科なのに、毎年同じ場所で、白い紙を切ったような頼りない花をつけて、ちゃんと実もなります。茄子は嫌地といって、おなじ土だといやがるものですが。
茄子の紫も、濃くて強烈ですが、酸漿の朱色もナマナマと鮮やかですね。茄子科って発色にこだわりのある科なんですね。トマトの赤も鮮烈だし。
さにづらふ少女ごころに酸漿の籠もらふほどの哀しみを見し 斉藤茂吉
酸漿は少女のイメージとよく合いますね。私が小さかった頃、母の趣味でいつも地味な色の服を着ていました。ある時祖母が「女の子なんだから」と白地に酸漿のような派手な赤い模様の飛んだ布地を買ってきてくれたことがありました。子供心にも「悪趣味だ」と思いましたが、祖母の気持はとても嬉しかったのをおぼえています。普段はちょっと冷たい、家庭的なことには興味の無い祖母だったので特に印象が強く、いまだに酸漿を見るたびその模様が目に浮かびます。
当て字でも鬼灯という字も好き。
鬼灯を点す鬼なら遊ぼうか おるか
酸漿を鳴らしたことはないけれど、つややかな袋に守られた丸い実は、口に含んでみたくなります。食用酸漿というものもあるんですってね。食べてみたい。
実は、ほおずきの名前はカメムシの一種「ほお」が好む所からつけられたという説があるそうです。今朝、ほおずきを切ろうとしたら茎にちいさな灰色のカメムシが列を作っていました。あれが「ほお」なんでしょうか。びっくりした。ぞっとしました。