やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

九谷焼美術館で村上春樹を聞く

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九谷焼美術館にて村上春樹を聞く

今日のような日を小春日和というのだろう。肩に置かれた手のように暖かで、空には淡く羊雲がうかんでいる。

外回りのついでに、九谷焼美術館で季節のお茶をいただく。私の器達も一郭に並べていただいていた。

手前の白菜型の向付け、久しぶりに見て、自分でも懐かしくなってしまった。左側の奥の猫さんは、ナプキンリングに作ってみたもの。リングにしない方が押し込んで使えて楽だろうと思ったのだが。

尻尾にリングをかける、指輪用にお求めになる方が多いらしい。

 

秋風に誘われて、ベランダの席に座り、他に誰もいなかったので、朗読の続きを聞く。このところ、村上春樹のフランス語訳を聞くのにはまっている。

今聞いているのは「海辺のカフカ」。声優の朗読が非常に巧みだ(猫の会話まで)。

村上春樹を、英語、フランス語、日本語でそれぞれ聞くと、オープン・エンディングというのは。日本語と日本人のメンタリティに良く合っているのかもしれない、と思わされる。空気を読むことに長けた国民性に、余情をかもす日本語が、さり気ない終わりを心地よく納得させてくれる。英訳は非常に精緻だ。フランス語訳は良く言えばクール、悪く言えば、やや唐突な感じが否めない。

カズオ・イシグロ村上春樹、どちらが先にノーベル賞を取るだろうとずっと思ってきたが、村上春樹の「ぜったい重くなってはならぬ」と決意した文体、俳句で言う「重くれる」ことを嫌うところが、翻訳だと、軽めに感じられるのかもしれないな、などと考えた。

秋の日の午後。めっきり少なくなった赤とんぼがベランダの先の木の枝に、一瞬止まって、また飛んで行った