二階の窓を開けると,肺を洗われるような香り。
ああ、朴の花が咲いたんだ!目を瞑ってしばし浸りこみます。
香りのよい花はいろいろあります。
早春の沈丁花、前に書いた風蘭や石斛の香り。
花ではないけれど黒文字や青文字の木の香り、ヒノキや肉桂。きりがありませんね。
しかし、朴の花の香りは、ほのかに甘いけれど清らかで、その底に悲しみさえ秘めていながら、重くならない、まさに天上の香り。
もし、朴の花の香水ができたとしたら、身に着けるのはためらいますでしょうね。人間の身にはきれいすぎる香りです。
名香とよばれる香水は、みな底に、動物性のムスクやアンバーなどをはじめ、悪臭と感じられる要素を秘めています。
いつも思うのです、、本当に美しいものには、どこかおぞましいところがあると。
香水もまた悪徳の匂いがあってこそ名香。
それが人間の創造する美の世界なんでしょう。
朴の花の香りは、人間離れしています。邪悪さの微塵もない圧倒的香り。
ベッド・リネンには最高かもしれません。
朴の花の香りの真っ白な麻のシーツに包まれて眠ったら、二度と目を覚ましたくないでしょうね。
それもまた、危険かも。、
写真上は午前中の花開くところ、二枚目は午後。