三井喬子さんの個人詩誌「部分」
黒田杏子師、橋本栄治さん、初め気鋭の俳人のお集まりの「件(くだん)の会」発行の「件」
さいばら天気さん笠井亞子さんのキュートな「はがきハイク」
頂戴し拝読しました。ありがとうございました。
三井さんの詩誌「部分」はいつもゲストがいらっしゃいます。そちらもおもしろいのですが、まずはご本人の詩から。
三井喬子
夕陽迎え
母屋の西側の杉の木を三本伐り
三本だけ伐り
零れ落ちてしまうカラス 勘三郎
朱に染まった散居村に
人影もなく灯りもなく
(今夜のねぐらはどうしよう!
中略
と、なんとなく牧歌的な日本昔話めいたかわいげなはじまりから座敷わらしや女系やらが朱に染まって食われてゆく幻想を誘い出す。
そこに、うかびあがる秘数「三」!
まず題名より高く置いてある「三井」の三、杉という字は木偏に彡(さん)。勘太郎でも次郎でもない勘三郎。音は通じる「散居村」のさん。
そしてこの詩の最後は
座敷わらしは当年とって十と三つ
十三詣でりはまだしてない。
と結ばれます。童謡のようにく可愛くてコワイ「夕陽迎え」秘数三 でした。
「件」
今号は「みなづき賞発表」と、「さろん・ど・くだん第三回 佐々木幸綱さんとの夕べ」の全文。
読み応えがありました。
対照的にかろやかな「はがきハイク」。レイアウトもとても涼しげです。
「暑さが厳しい中皆様いかがお過ごしでしょうか。外を歩くとき水とハンカチは必携。汗がでるうちは大丈夫。せいぜいからだを動かし労働に励む所存です」と丁寧なご挨拶があって、
東京ははたらくところ蒸し暑し 天気さん
地下街はひかりに満ちて水中花 天気さん
地下街の人工的な不夜城的光のなかにやはり人工の花水中花。水中花は涼しげで、そこはかとなくアンドロイドの哀しみのようなものを湛えているようですね。
テレビまた薄くなりたり冷奴 亞子さん
こちらもすずしいなぁ。