やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

いただいた詩集 「角」「天彦」

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福井県で出版されている二つの詩誌。
詩作品とエッセーが収録されています。

「角」には、比較的短い作品が多い。「蝸牛」には庭の紫陽花の葉を這う蝸牛に寄せてそっと心情が語られます。蝸牛の殻と耳の中のさんはん器官の形状の類似が連想を誘うのでしょうね。他にも「祝婚」「妹」などなど。生活の場に根ざした誠実な作品群です。

「天彦」にも「雨垂れ」「笠木の石」「懐古の港」等々、風土や思い出が綴られそれぞれの人生の思いが陰影を添えています。
誠実で、かつ長い年月、詩をかいてきた熟練の作品群です。

 しかし、しかし、ずらりと並んだ、真摯で真面目で、純良な作品を眺めていると、私の中の天邪鬼が背を丸めて「こんなに一隅を照らされたら、まぶしくってしかたがないや」とこぼすのです。

 勿論、野辺に咲く一輪の花に頭を垂れる敬虔さをしらないわけではありません。自分がひねくれているだけなのでしょうが、善良さも大上段に振りかぶられると辟易してくるもの。
 香水の底に、悪臭に近い麝香だのアンバーだのが秘められてこそ深みがあるように、人の心の底知れない部分、言葉の糸にして紡ぎだす前の、繭の中うごめく異形のの影を、意識しないことは、ないはずだろうと、おもうのですが。あえて書かないのが大人なんですかね。