やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

中原道夫句集「彷徨(うろつく)」

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美本!

あまりにもカッコいい装丁なので床に倒れて悶えました。

こんな洒落た本、一度でいいから出してみたい、という身の程知らずな願いが、嫉妬のように身を噛みます。

表紙をめくると、漆黒の見返しに爬虫類の銀鱗がはしります。そして、とても小さな文字で「彷徨・目次」ク~っにくい。

装丁についてばかりでハァハァしてても、しょうがありませんね。勿論内容も個性的です。

これまでの五十年で地球を五周は旅をしたという著者の海外詠だけを集めた一冊です。楽しいです。

若き日のマラケシュウズベキスタン…。この当時の中央アジアはまだ、ちょっと危なくなかったですか?研究者の秋野豊氏が何者かに殺されたころじゃない?惜しい方を亡くしましたよね。

ウズベキスタン吟行
 
 血統のいづくに濁る柘榴かな  

ヨーロッパが葡萄、マグレブナツメヤシなら。中央アジアは柘榴よね。歴史と伝統の血の中から咲き出た真紅の花の真紅の実。
その後、ドイツ、ギリシャとつづいて、2000年にはコスタリカ

インディオの裔とおぼしき黍の餅

蒙古斑もなつかしいインディオの方の黍餅、おいしそう。

ともあれ地球を五周もしていらっしゃるので次から次町から町、読んでいるだけで疲れそう。これが”旅を住処とする”俳人の”旅と云うものなのね。

 私なんか大してどこへも行きませんが、海外へはのんびりしに出かけるんで。意気込みが全然ちがいます。
巴里のような異邦人には居心地の良い町では、真夜中過ぎにバールに入ってシャンパン注文したってどってことないし。日本にいるより、よほどのびのびできるんですよね。場所によっては「御一人ですか」攻撃がうるさいことはあっても。

拝読するうちに、出不精の私も、またどこかへ行きたくなりました。

句集の御礼の手紙に貼る切手がなくて郵便局に行ったとき、ハタと困りました。

なにしろ、エンタイアでパリで個展までなさっている中原氏です。キティちゃん切手など貼ろうものなら、きっとお怒り遊ばして、読まずにごみ箱に捨てられるに決まっています。「ちょっとくらい高くてもいいから綺麗な切手貼ってください」とお願いしたけど、それは郵便局員の沽券にかかわるらしく、結局、ひなびた郵便局にあった82円切手の中で一番きれいな切手を貼ったつもりだけど、読んでいただけたかな。
綺麗なご本をいただいて、すっかり舞い上がっちゃって、御礼の手紙に馬鹿なこと書いちゃった気がする。穴があったら入りたい。


*エンタイア 使用済みの切手ばかりでなく葉書や封筒全体を美術作品として見るアート