残暑きびしい中、今月も初折の裏の続きを巻きました。
先月は七句目
丘の上二つの影が長く伸び 中江
という教会のある丘の上の二人といった、恋の気配の句でおわりました。
今月は、その続きです。
八句目 恋人つなぎする手の湿り 佐藤
実は私、恋人つなぎって知らなくて。教えていただきました。なるほど、かなり親しくなくてはこういう風に手を握り合ったりしませんわね。
思わず緊張して、掌がじわっとあせばんできたんでしょうか。リアルです。
さて、次はちょっと急ですが月の定座です。
九句 どこまでも月ついてくる石畳 橋本
恋の逃避行を月に邪魔される、といったところ。
十句 足を停めれば虫の音響く 正藤
前句の道行きの後、一人になった人物が足を止めると虫の声がいよいよ身に沁みる。どこまでも歩き回った後にゆっくりと歩を止める。上手い流れです。そして秋も行き、恋も終わる。
つぎは、いよいよ花の定座です。月の出が
遅かったので、秋から春に季移りですが、これは、ままあることなんです。月と花の定座が近いので。
十一 花一枝こほろぎ橋を渡りけり 平井
花の一枝をかざしに橋を渡る風流人。こほろぎ橋もどこか粋な名前ですね。山中温泉の渓谷にかかる風情のある橋です。この辺りで、名所を出すのも一興ですし。花に酔うような気分が素敵です。
十二句 舌にしみ入る木の芽田楽 梶
山椒がぴりっときいていたんでしょうか。美味しそうですね。お花見のお弁当に木の芽田楽はなくてはなりません。
春風駘蕩の花の句に、ぴりっと添えた味覚の刺激。
さてこれで初裏も終わりです。
時間があったので、名残に突入です。
名残の表
一句 四畳半まあるく掃いて春行かす 佐藤
佐藤さんの句はいつも感覚がシャープで面白いですね。四角い四畳半を丸く掃くところに、春愁あり!とみました。
春の句も三句つづきましたので、つぎは無季の七七ですね。