薄紫の雲の間から茜さす日光とともに微笑む我輩。
春の夜の夢の浮橋とだえして峯にわかるる横雲の空 定家
の一首のごとき、耽美な光景と思う向きも多かろうのう。
我輩はミケ。猫である。
勿論、雲の間にいるのではない。じつはお布団の間に避寒しているのである。
三月というのに、今日は雪が積って、浮かれ出た水仙の芽等にびしょびしょと陰険な圧迫を加えている。
そんなわけで我輩もベッドカヴァーの下にもぐりこんでいるのである。
ええぃ、こう寒くっちゃタンビもトンビもないわい!
ああ早くエンガワで日光浴しながら思う存分ナメナメできる春にならないだろうか!
お布団のすきまをわけておひ出くる華のはつかに見えし我かも ミケ
勿論これは古今集壬生忠岑の歌の本歌取りである!本歌は
春日野の雪間をわけておひ出くる草のはつかに見えし君はも 忠岑
である。念のため。