雪のない穏やかな新年を迎えることができました。まずはめでたい…のかな。折口信夫先生も、ろくに考えもせずに「おめでとう」などと言うな、とお怒りでしたが、ともかくも、気分が一新するのはそれなりに良いことでしょう。
さて、新年のテーブルは、祥瑞手捻子紋様菓子鉢に蟹。いただいたんですよタグの付いた氏素性の正しい越前蟹さん。さすがに美味でした。その左、紅梅碗に鳥ガラスープ味のお雑煮。ネズミ箸置きは向こう向きだと何となくよそよそしかったですね。
染付四方蓋つき小鉢の黒豆はワイン煮です。中央の赤絵小菓子鉢のきんとんは林檎をレンジでちんしたものをまぜてあります。さっぱりして食べやすくなりますよ。
奥の赤絵馬上盃には京人参と蕪のフレンチドレッシングなます。多少新しい風味のおせちにしてみました。
冬至を過ぎると日差しが家の奥まで届くようになります。寒さの苦手な私ですが、冬の日の率直な明るさは、見飽きません。 壁に落ちた枝影、使い慣れた机の端の艶、見慣れたものが特別なことを語りかけてくれるような気がします。
昨日と同じところに居れば初日さす 桂信子
日足の伸びたことに改めて気づくのも新珠の新年らしい。ことさらにおめでたそうでもなく淡々とした日常の中に、初日を受け止めているのが尊い。
逆に非日常の初日と云えば、わが師黒田杏子のこの句でしょうか。
ガンジスに身を沈めたる初日かな 黒田杏子
大きな初日、大きな世界です。先生、俳句でノーベル文学賞取ってください!