やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

蘚苔類の勝利

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 蘚苔類は何も欲しがらない。肥料はいらない。日光は多少嬉しいが、日陰も別に厭わない。水はさすがに必用だけれど、なければカラカラになるまで我慢する。ささやかなお湿りで忽ちツヤツヤの緑にもどる。蘚苔類はあくまで控えめだ。
 ある日、林道のアスファルトの隙間に人の目には見えない胞子が落ちた。車がその上を何度も走り抜けた。時には工事用のダンプも通った。山から切り出した太い杉を何本も載せたトラックも通った。路面はへっこんだりひび割れたりしたが、苔は生き延び、増え続けた。
 指先でかるく剥がすことが出来る。何の抵抗もなく。でも数日すればもう元通り。緑の網目は広がって行くばかり。一番弱いものが一番最後まで生き残るのだ。
 林道がいつか消え、人間の作ったものが全て廃墟になったとき、苔は生き生き輝くだろう。苔はけっこうお洒落なんだ。人の目に付かない所に凝っているんだから。