戴いた句集。この三月に上梓された、河辺克美さんの第二句集です。
京都伏見にお住いの作者ならではの、いかにも京都らしい四季の折節の句材も魅力的ですが、何といっても特徴は、自在な遊び心でしょう。
神の蛇いそいでますと言ひて消ゆ 克美
愛想もないほど素早く消えてゆく蛇のしっぽの残像が目に残る。
私のさして広くもない交友範囲からの印象ですが、関西と関東の文化の違いって、未だありますね。
関東の人は、良くも悪くも、書生っぽいというか。生真面目で純真なんだけど、下手すると重くなって野暮になりかねない。
その点関西人は、遊び上手で、深刻ぶったのが嫌いですね。関東の無骨者には本心が見えないみたいで捉えにくいかもしれないけど。
河辺克美さんの上質の遊び心に、舌を巻きました。
勿論、みやびな句もたくさんあります。
夕灯さくらをともすわけでなく 克美
別々にともし火を消す梅雨深し 克美
二句目、消した後の闇の深さは、なんとなく古井由吉の世界っぽい。
とは言え、やはり作者ならではの味は
おぼろ夜の羽交締めしたきおぼろ 克美
などの雅なんだかびっくりなんだかという面白さにあるとおもいます。
落ち武者のやうな顔して月仰ぐ 克美
ハハハ笑っちゃった。私も肩よりも長い髪してた頃、由井正雪といわれましたよ。
句集の表紙は画家でいらした御主人の作品だとか。
初夢の通行人に夫登場 克美
通行人ですか!
達観してらっしゃいますね。