やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

三月の連句会 ゲストをお迎えして

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歌仙もいよいよ名残の折に入りました。
今回は素敵なゲストをおむかえしております。
エッセイストの岸本葉子さんです。
前日に「山中温泉フォト575」の選者をつとめられ、ご講演をなさって、この日は、お忙しい中連句の会に御来臨あそばしたんです。
チャーミングなゲストにすっかり舞い上がってしまってお恥ずかしい限りなんですけど、私ばかりではなく連中の面々も大盛り上がりでとても楽しかったんです。
でも、岸本さんは辟易なさったんじゃないかしら。ともあれ、連句の場の和やかさは感じ取っていただけたのではないかしら、と思います。

さて名残の表

折立は季移りをして夏の句でした。

 折立 心太黒蜜たっぷり忌を修す 笹次
二句目     蓮の浮き葉を見て小半時  佐藤

名残の表は、後半に月の座がありますが、その月も多少早く出ても遅くても良いという自由な流れなので、思い切りやりたいことをやっておく場所です。と、いうことで無季の羇旅か恋かその両方の長句をお願いしました。


 網棚に鞄のふたつ並びたる   岸本

恋の旅の句、かなり激しいものの多い中で、一番上品に淡い情感漂う一句でしたのでいただきましたら、ちょうどゲストさんの御句でした。やらせではありません。
 こうして恋の句が出ますと前句の蓮の浮き葉をじっと眺める物思いは、恋のせいであったかとも読めてきて、恋の呼び出しとも読めてきます。連句の妙ですね。
 四句目は

 ぼそぼそ小言云うのも好きで  上出

個性的な付けですね。ぼそぼそ小言を言われるのは普通ならいやかもしれませんが、恋しているとそれさえ親密さの感じられる、睦言に聞こえるんでしょうね。なかなかに色っぽいかも。
 恋の句は三句は続けるといいます。次の五句目はそろそろ恋も終わりというこころ。

 鍵付きの日記箪笥にしまひ込み   岸本


一人胸の内にしまう秘密の恋の日記。ロマンチックですね!投句は二十句ほどもあって、なかには、自分の恋を失った腹いせに人の恋を邪魔するなんてすごいのもありましたが、岸本様のおかげで情感豊かなロマンチックな恋の座を運ぶことができました。
さて六句目

  少しとけたる飛行機雲と  中井


はるかな空の彼方に、薄れてゆく飛行機雲、哀感あり、とみました。遠く過ぎ去った恋を思い出すのもこんな仄かな憧れにも似た感じかな、とおもって恋離れのくとしておただきました。
七句目ついに秋の長句です。ああ季語が入るって、ほっとするなー。

 昏れなづむ潟の面を吹く秋の風  正藤

さすがに手練れの連中の皆様の秋の句はすてがたいものばかりでした。加賀は昔、江沼郡と言われていたくらい木場潟、柴山潟、北潟など潟の多い土地です。そんな風土性を感じさせてくれるところで、この句をいただきました。本当は季語は三秋の「秋の風」ではなくもっと初秋っぽいほうがこのましいのですけど。
まぁ、古今集の秋の部一番も「風の音にぞおどろかれぬる」ですし、風の音などが一入意識されるのも秋に入ったころかなと、いうことで。

特別ゲストがお見えになって忘れ難い連句会となりました。床の間には加賀野千代女の軸がかけられてありました。
繊細なお心配りをなさる少女のような岸本葉子氏のお写真は、出してよいかどうかお伺いするのを忘れてしまったので、私の個人的フォトギャラリーに秘蔵しておきます。
おかげさまでとても楽しいひと時でした。ありがとうございました。