やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

古書の味

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梅雨の晴れ間の一日琵琶湖のほとり、長浜市古書店「さざなみ」をたずねました。
 古い町並みの、古い建物。入り口から細い廊下をたどったその奥の、小さな古書店です。
小さいけれど、オーナーの目で選び抜かれた本、本、本。本について一日中でも話していたくなるようなみょうに居心地の良い場所でした。猫だったら忍び込んで秘密基地を作ったことでしょう。
お店の裏手にはすぐ川に出られる細い階段がありました。その昔は琵琶湖水運の町だったのですね。いいなー、水の近くにある暮らし。本当に漣の国なんですね。

その後、名物長浜うどん(?)を食べてもう一軒、ギャラリー「季の雲」にまわりました。素敵な建物!白磁の作品の展示会中でした。
古いものもありました。何に使うのか解らない古びた道具、平出隆の『謎の部品」という詩の一節を思い出しました。

『理由ある精巧さに自分を固めあげたあと、その理由といつかしらはぐれたもの、』

まさにその通りですね。そして詩はこうつづきます。

『このものは拾われた瞬間から、謎というものの部品となり、未知のつれあいの狂おしいかたちを、ついに精巧に掴みとる。』

「掴みとる」という断言は作者の若さでしょう。私には永久に俟ち続けるかたちに見えてしまいましたけど。私には出会う時間はもう残されていないからでしょうね。


 漣の滋賀のおほわだ淀むとも昔の人にまたも逢はめやも  人麻呂

ギャラリーの片隅にちいさな「海胆」の明りがありました。ほんのり燈る可憐さに欲しくなってしまって、よっぽどよだれをたらしそうな貌をしていたんでしょうか、同行してくださったお嬢さんがこっそり買って、後でお土産に手渡してくださったんです。なんてお優しいの!マドモワゼルD!ありがとうございます。

いい本やいい人に出会えて素敵な一日でした。長浜、また行きたい。