「一周忌に刊行することが出来た」と一筆添えられて届いた一冊の本。
去年、山梨県の飯田蛇笏、龍太のお住まいの「山盧」の講演会の後、「さよなら、さよなら、」と手を振って別れたのが、そのまま今生の別れになってしまった、黒田先生の、掲載されたお写真が、懐かしすぎる。
一周忌の記念に藤原書店から出版された、この本は、 黒田先生の遺稿と各方面からの寄稿、そして、私も書かせていただいた、藍生会員の寄稿と三部に分かれている。
「各方面」と一括りにしてしまうのも不躾なきがするが、ドナルド・キーン氏の御令息をはじめ、作家、評論家、多彩な顔触れにあらためて驚かされる。俳人はもちろん多いが伝統的な句風の方も、前衛的な方も、俳句として面白く良ければ良い、という黒田杏子の見識の偲ばれる方方揃いである。 それは当然のことに思えるが、実は、案外に少ないようで、寂しい。伝統は常に刷新され、前衛は常に乗り越えられなければならない。当然のことなのだが。
御夫君黒田勝雄氏からの、句碑を兼ねたお墓への納骨のお知らせも届いたところだ。次の上京の折には、お参りさせていただこうと思った。