夏の一夜、Muttoni の自動人形シアターに行ってきました。
エントランスには、ちょっとジャコモ・マンズーを連想させる法王が小さなランプを掲げて奥へと誘ってくれます。その先にはアンドロイドと天使が三尊像のように安置されていました。
闇の中で、自動人形達の棲んでいる棺にきらびやかな灯が灯り音楽が流れる。奇妙にノスタルジックです。束の間妖しく息づいて、やがてとまってしまう人形達の儚さ。
「うつし世は夢、夜の夢こそまこと」とは江戸川乱歩の言葉ですが、未来の自動人形の夢の中で、私達自身のこの世界が追憶のように、夢見られているのかのよう。
思い出になったらきっとこの世もこんなふうに懐かしくきらきらしてみえるのだろうと、ふともの哀しくもなります。
小さな箱の中に過去と未来の交錯する別世界をのぞく、目くるめく体験をさせてもらいました。
二枚目の写真は「ワルツ、オン ザ シー」という作品。少女の人形が登場すると波の音が聞こえてきます。シュペルヴィエルの「海の上の少女」をイメージしているのですね。
ムットーニ氏はマンディアルグもお好きらしい。最も猥雑な事物の中に顕現する聖なるものの面影。キャバレー、天使、胸もあらわな少女のマリア、メランコリックなヴィーナス、澁澤龍彦が生きていたらお買い上げになりそうな作品がいっぱいでした。私も一つ欲しかった。夜毎に目もあやな光をまとったエロチックな小さなお人形達を眺められたら、さぞや楽しいことでしょう。
ゴージャスな闇の中では饒舌なプロの語りを聞かせてくれたムットーニ氏は上演が終わった普通の照明の下ではちょっとシャイなご様子でした。それともお疲れになってただけかな。日程を見るとすごいですものね。日中に三回もミュージアム・トーク(というのかな)・説明会があってその後ほとんど間を措かずに一時間半もの上演会ですもの。
アート・コア 金津さんちょっと作者を酷使しすぎてません?
初期のペインティングなどもあってかなり充実した展示はよかったですけれど。
「Muttoni Theater」という小冊子の写真を拝借してアレンジさせていただきました。