お花見で忙しい時節柄、お集まり下さった連衆はわたしも含めて五人とやや寂しいながらも、楽しく歌仙を巻きました。
先月は初折の裏六句目
ひととき回る勝独楽の恋 弘美
という秀逸な恋の句で終わりましたので、こんかいも恋の句をつづけます。
七句 指きりに次の逢うひを約しては 梶
勝ち独楽の恋は、そのまま少年少女の恋と見て、初々しい付け。指切りして約束するいじらしさ。
八句 思い出胸にアルバムめくる 中江
淡い恋もすでに思い出に…連句の常とは言え、早い。
次は月の座なので、春の月をお願いしました。
九句 亡き人の席そのままに春の月 正藤
恋の続きと読まなくてもいいのでしょうけれど、何となく恋の名残という感じ。遺愛の椅子などはなかなか片づけられませんよね。月光に青く照らされた座席に、亡き人と一緒に春の月を眺めましょう。
十句 身ほとりにある鶯の声 中江
この頃鶯の声をあまり聞きません。以前は拙宅の辺りではうるさいほど囀っていましたのに。
まだ鳴き声もそれほど華やかではない鶯の控えめな声が思いがけなく、ほど近くから聞こえた。もの懐かしいです。
前句の寂しさを万象へのなつかしさへと転じた上手い付け。
次はいよいよ花の定座です。
一片(ひとひら)の離れほどけて花筏 正藤
美しい光景ですね。離れては解けつつ流れゆく花筏。豪華な眺めに漂う、もの哀れさがまた一入のふぜいです。
十二句 揺れる白藤簪にして 平井
桜の花のつぎに藤の花。ほんとは植物の句の後また植物は避けたいところだったのですが、この時に限って何かと打越に重なったりする句が多くて。
そういえば春の字も発句にあったな。
こういうこともありますよね。
。何しろその場で十五分かそこらで句をつけるのですから。
写真は我が庭の一人静です。控えめな中に華やぎのある花ですね。
静御前も艶冶な美女というより、こんな少女っぽさのある人だったのかな。