暮れも押し詰まった中、芭蕉の館の連句会には、おりからの「雨にも負けず」連中の皆様がお集まりくださいました。
これぞ,風狂の友!
表の秋から続いて、折立も晩秋の長句。
一枚の田を貪りし小白鳥 上出
白鳥と云うとキレイとか、優雅とか、連想しますが、この句の白鳥は(群れなんでしょうね)せっせと田んぼの泥をほじくり返して餌を漁っている。白い羽が汚れようと「汚れちまった悲しみに/今日も小雪のふりかかる」なんて詠いませんね。ひたすらに生存競争です。それもまた一種の潔さでもあり、美でもある。
つづいて、
海鳴りとほく蓮根掘りつぐ 笹次
蓮根も蓮田で取りますから、多少似た風景かもしれませんが、北陸の風土性がかんじられて非情に格調のある展開となりました。
加賀蓮根はおいしいんですよ。でも蓮根掘りは大変な重労働です。
さて、晩秋の句が終わって、初折の裏のこれからは談論風発といきたいところです。それで無季ですから何か思い切った展開おねがいします、無常観でも恋でも、 と、言いましたら、どーんと恋の句ばかりが大量に!!
選句も楽しかったですが、中に出色の恋句が!
寂しいと言い私を妻にする 弘美
普段は堂々と男らしい人物が、ぽろりと「寂しい」といったんですね。必殺の名科白ですね。
そして「私」(わたくし)という読みをあてたところも上手いんですよ。奥ゆかしく芯の強い、やや古風な女性のイメージが彷彿とします。
全員がハァ~とため息をついたところで次句は
廻して下さい回覧板を 梶
なんという、軽やかな受け流し。あっさりと恋離れです。
この、体の躱しかた、絶妙ですね。
秘めやかでいて情念的というか内省的というか、思いの深い恋句と、それをさらりと受け流す、水際立った手際!
「勉強になりました!」という感じです。
さて、来月はお正月、めでたい展開になるでしょうか、楽しみです。