やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

そのピアニストの名はティエリー

コロナで外出を控えるようになって、気晴らしにピアノを弾く時間が増えました。母に手ほどきをしてもらって、ちゃんとした先生についたこともない自己流なものですから、ユーチューブでいろいろなピアニストの演奏を聴いては物まねしています。

 ショパンノクターンを ひく時はティエリー・ドゥ・ブランホフをできる限りですが参考にしています。自分自身の心の声に耳を傾けているような演奏で、どことなく品があって寂しげで、たとえばグレン・グールドのような圧倒的な演奏というわけではないけれど、心惹かれるピアニストです。

 ブランホフという名前で、お気づきかと思いますが、お父様は「象のババール」の作者です。37歳で亡くなったお父様は、長く生きられないことを知って、子供たちのために「象のババール」を生み出したのですってね。三歳だったか四歳、で、お父様と別れることになったティエリー氏は、早くにピアニストを御止めになり、ベネディクト会の修道士になられました。

淡々としながら、どこか狂おしさも秘めた音色に、ふと、ユルスナールの小説「アレクシス」の主人公の作曲家、ピアニスト、の演奏もこんな感じかな、と思いました。 

マルグリット ユルスナールは御父君の方と、ほぼ同じ年代です。ティエリーの演奏を聞いたこともあったかもしれません。ユルスナールは普通の学校教育は受けず、教養人だったお父様の薫陶を受けて育ちました。

 「父親は悲しいものだ」と言ったのは誰でしたっけ。そこだけ切り取って云々するものではありませんが、子供にとっても、父親を早くなくすのが悲しいのはもちろんでしょうが、、唯一無二の存在として慕っていた人を人生の半ばで失うのもかなり大変だと思います。結局、人間は悲しいものだってことでしょうか。

私自身も早く父を亡くしましたが、その時もちろん悲しかったけれど、「これで心配かけることを心配しなくてすむ」と思ったのも事実でした。

写真の文庫の表紙はエゴン シーレの自画像ですね。女性に人気の画家ですが、この絵の通りなら無理もないって感じですね。色も線もきれいだけど、女性をほんとは女性嫌悪じゃないかと思うくらい、ひどく残酷な描き方してますよね。残酷に見据えるのも愛なのかなー。人間はめんどくさいな。