やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

炎天下のくちなし

異様に暑いここ数日家にこもっていましたが、庭に出てみたら、くちなしの花が咲いていました。どんな環境でも植物はけなげに花を営む。

 近づけば甘く重い香りがたゆたっています。くちなしの香りは正直に言って少々苦手です。祖母のなくなった日はとても暑かったので、母が亡骸の枕元にガーデニア(クチナシ)の香水をふったのです。それ以来、強い甘さとベースのアンバーグリの香りは、死の匂いとして脳に刻まれてしまったようです。

原産地は東アジアで、日本にも原生していたのに、あまり詩歌に読まれてこなかった花ですね。万葉集の「くちなし」は、もっぱら染め物に使われた、その色についてのものばかり。その点は椿もその灰の有用性ばかりたたえられているから似たようなものかもしれません。そういえば椿の歌と言えば思い出す「巨勢の山つらつら椿つらつらに見つつしのばな巨勢の春野を」とうたわれたつばきの照葉ほどではないにしろ、くちなしの葉も写真のように若いときは明るい鶸色、おおきくなると濃い緑で、つやつやです。常緑で丈夫で、花のしっとりした白も、実の黄色もきれいなのに、なんとなし暗い感じがするのはなぜでしょう。

 

  ひだるさやピアノに映るくちなしの  おるか

 

ちなみに食用にした時のくちなしの、ほのかな香りは、好きです。アンバーグリと結びつくとだめなのかも。