小さくてかわいらしい伊吹ジャコウソウ。庭は湿気が多いので、鉢にとって育てています。独特の香りに、麝香の名前がついていますが、ムスクとはちがうような。かといってグリーン系ともフローラル系ともつかない、ほの暗さのある香りです。
嗅覚の鋭い調香師のような方は、良い香りだけでなく、いわゆる悪臭もかぎ分けられなくてはならないとききました。ムスクやアンバーなどはそのままだと素人にはむしろ悪臭と感じられるけれど用い方によって銘香がうまれる。
絶対音感のある方の聞いている世界が私のような凡人には理解できないように、嗅覚の世界も本当に鋭い鼻にとっては、さまざまの要素や思いの行き交う場なのでしょう。常識的な良い香りや悪臭と一概に弁別できないその場所は、いわば善悪の彼岸!?
不思議な香りの伊吹ジャコウソウは、善悪の彼岸に咲く花か!ともあれ、私はこの小さな花が好きです。
滋賀県の伊吹山に自生していたので、『伊吹』の名を冠しているんですってね。伊吹山と言えば思い出すのは、
木枕の垢や伊吹に残る雪 丈草
良い句ですね。これほどきれいな木枕の垢はない、と誰かが書いていらっしゃいましたが全くその通りです。
伊吹山や白山など信仰の山は、大切にされてきたおかげで珍しい植物も多く残っていて、イブキ○○、白山○○という名前の花々、たくさんありますものね。白山チドリなど、良い花ですよね。育てられる自信はないので憧れているだけですが。
久しぶりに香でも聞いてみましょうか。夜になってやや雨気が感じられるので、すっきり白檀でも。
菖蒲香はずして風の伊吹山 おるか
丈草の旧居あたりでお香の会などしてみたい。