やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

百合の影で 

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末枯れた百合

    

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 飛石の下から、我にもあらず、といった風情で咲き出してしまった百合の花。この辺りでよく見かける百合です。野性の花の中では大きく目立つ、まさに「神は一輪の百合をソロモンの栄華にもまして装わせ給う」と福音書にもある通りの、すっと立ち上がった姿が、何となく天上的な清らかさをただよわせる花ですね。

天使ガブリエルがマリア様にささげる、地上に有りながら、汚れを知らないものの象徴の姿。

インドだったら、さしずめ泥中の蓮なんでしょうけど。

 百合はどこも三の倍数になっているので三枝とも言われます。美術ばかりでなく文学にも数多く取り上げられてきました。

 一番に思い出すのは、宮沢賢治の「がドルフの百合」でしょうか。寒い嵐の中、凛として咲く百合の花。他には、エリアーデの「百合の陰で」も忘れられない。昔読んだものは「百合の花陰で」だったように記憶しているんですが写真の全集では「百合の陰で」になっています。不条理演劇みたいな重苦しくも不可思議な短編です。

日本は野性の百合の品種も多くて、ユリ王国なんですってね。奈良の狭井神社の三枝祭りなど美しいお祭りも伝わっています。他にも神事や、お酒の席で百合の冠をつけることもあったとか。強烈な匂いで頭がボーっとして、ハイになるのだそうです。ほんとかな。

大き目のお湯呑みは、赤絵金彩「廃園の薔薇」です。クリムトのアトリエでみた夏の終わりの薔薇。