あの純白の花弁が、いまや、…。
しかし、美しいままでいてくれというのは残酷な願いです。
この世にあれば汚れるのも、また一興。
汚れつちまった悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れっちまった悲しみに
今日も風さえ吹きすぎる 中原中也
中也も、その悲しみを、まるで自分の子供のようにそっと抱きしめてやっていますよね。
散りまがう辛夷の花は雪よりずッと大きくて、撃たれた白鳥の羽毛のよう。
風の吹きすぎるたび、何処へか消えてゆく。
汚れてそして地に吸われ、またいつの日か会うのでしょう。
正法眼蔵にもありました。「花は愛惜に散り云々」
全ては、うつろうと知ってはいても、悟りに縁遠い私には花の散る悲しみは年々新たです。庭の桜の元気がないのもじゅみょうかな。
老幹に腐臭の甘き紅枝垂れ おるか