やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

汚れちまった悲しみに

f:id:orcamike:20210402132445j:plain

あの純白の花弁が、いまや、…。

しかし、美しいままでいてくれというのは残酷な願いです。

この世にあれば汚れるのも、また一興。

 

汚れつちまった悲しみに

今日も小雪の降りかかる  

汚れっちまった悲しみに

今日も風さえ吹きすぎる    中原中也

 

 中也も、その悲しみを、まるで自分の子供のようにそっと抱きしめてやっていますよね。

散りまがう辛夷の花は雪よりずッと大きくて、撃たれた白鳥の羽毛のよう。

風の吹きすぎるたび、何処へか消えてゆく。

汚れてそして地に吸われ、またいつの日か会うのでしょう。

正法眼蔵にもありました。「花は愛惜に散り云々」

全ては、うつろうと知ってはいても、悟りに縁遠い私には花の散る悲しみは年々新たです。庭の桜の元気がないのもじゅみょうかな。

  老幹に腐臭の甘き紅枝垂れ  おるか