優しい雨が降っている。
オガタマの花も盛りを過ぎたようだ。今年は、あまりに多く花をつけて遠くからでも梢が白く輝いて見えるほどだったから、これを最後に枯死しなければよいがと不安になってしまう。心の弱いことだ。
オガタマは招霊木とも書いて古くから神社に植えられてきた。木蓮の仲間で、辛夷のような清香を降らせてくれる。去ってしまった神々の残り香とでも言いたいような秘めやかで高貴な香り。 天宇受賣命、アメノウズメノミコトが天岩戸の前でダンスをした時の採りものと言われている、日本の自生種の一つだ。
エロチックなダンスのイメージとは、何となく違う気もするが、折口信夫によると、巫女の踊りなどの神の遊びは魂振り、つまり身体から出てしまった魂を招く儀礼である(上世日本の文学)そうだから、招霊木は、まさにそのための木ということなのだろう。
たしかに、わたしも魂になったら、あのまっ白な蕾の中で眠りたい。どんなに気持ちよいだろうと思う。
招霊木や空の瞳にみつめられ おるか