やきもの日和

やきものを作ったり俳句を作ったり

花の日の

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北陸もソメイヨシノは満開になりました。美術館の前の公園の、橋の上からの眺めです。屋根の付いた橋なんです。

ソメイヨシノのいかにもその下に死体の埋まっていそうな、狂ったような咲きぶりも嫌いじゃないけれど。

あまりどこでもこればかりで、多少変化もほしいですよね。太白見たいな~。

 

 西行明恵も美貌山桜  おるか

 

f:id:orcamike:20210331004604j:plainそして、我が家の枝垂れ桜と辛夷。枝垂れ桜はまだ満開には間がありますが、やや花が乏しいみたいです。花が終わったらお礼をしなきゃ。

 ろんろんと回る蹴轆轤花の昼  おるか

 

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この季節の愉しみ。花を眺めながらのランチ。どうってこともないパスタとサラダですが。仕事机で、いただきまーす。

小鳥が花を揺らしてる。山雀かな。あと何回この木の花を眺められるのかな。「時よ止まれ」、おまえは、あまりにうつくしい。」一期一会なんて言葉も、若い時から知ってたしわかってるつもりだったけど、歳がゆくと、骨に沁みますね。

 

 老桜の四手落としたるにはたづみ  おるか

四手は昔は木綿(ゆう) で、いまは紙で作ってる神にささげる注連に下げるものです。桜の神木って珍しかったので。

 

うちのオガタマと辛夷

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うちのオガタマと辛夷

軒に近い。枝が屋根にかかりそう。でも辛夷の花を近々と観察できます。良い香りです。

          

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オガタマの花の眩い白。もくれん科には珍しい常緑の木です。背が高すぎてよく観察できません。

朴の木は今年は少し花が少なそう。ハクモクレンも今満開。もくれん科の花の香りが好きでいつの間にかずいぶん増えました。

朴、辛夷、招霊(オガタマ)、どれも日本原産って、うれしい。天上の香りにすわっているだけで、なんというかありがたい。

こんな素晴らしい木々に説話や由来譚がないのが不思議です。

ギリシア神話ではどんな植物もそれぞれ何かと意味深い物語がありますのに。

そういえば、植物に転生するお話では、美少年は草の花になり、女性は木に変身しますね。ダフネ→月桂樹、ペルセポネ→石榴  ナルシス→水仙、ヒヤキュントス→ヒヤシンス、アドニスアネモネなどなど。

日本でも、美女と言えば、木の花咲くや媛、美少年の名前といえば蘭丸。芭蕉は友人杜国のことを万菊丸なんて「稚児めいた名前」で呼んで楽しそうでしたね。

なぜ美女は木の花になり、少年は草の花になるのか。ふしぎだな。

 

辛夷の花は天上に

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庭の辛夷が咲き始めました。早い。

オガタマノキは満開です。早い!

犬山毛欅の花も見ました。早すぎるッ! 

温暖化も急激に進んできましたね。昨今のパンデミックは人の営為を抑えようとする地球の反撃なのでしょうか。ともあれハクモクレン辛夷、オガタマと我が家の白い花の木は、朴の花を残して咲きそろいました。ああ、美しい。

      山なみ遠に春はきて

      こぶしの花は天上に

      雲はかなたにかへれども

      かへるべしらに越ゆる路   三好達治

 

辛夷の花を見るたび口ずさんでしまうこの詩。多少甘い気もしますが愛誦性って大事ですよね。

今年は白山の公園の奥の辛夷にあえるかな。その公園の辺りでは辛夷と櫻が一度に咲いて、遠い山並みを眺め渡すと万葉集

 

 うち靡く春きたるらし山並みの遠き梢の咲き行く見れば  尾張

の歌が思い出されます。

思い出してばかりですね「何を見ても何かを思い出す」はヘミングウェイでしたか。年を取るってこういうことなのね。

 

辛夷空のやさしき方へ雲  おるか

クリスマスローズとイチゲ

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とある山中のクリスマスローズの秘密の自生地…、ではなく我が家の庭の風景です。

クリスマスローズって地植えで増えるものなんですね。何の世話もしないのに、年々増えてくれます。その後ろ、蕾の写真を挙げた紫のイチゲです。こちらも毎年じわじわテリトリーを広げています。

イチゲの後は山芍薬の庭になります。個人的な印象にすぎませんが、日本の草花は、咲き終わると、すっと消えて次の花へ場所を譲るような気がします。

その上、もともと自生していたのだから、環境に適応しているはずなのに、なかなか気難しい。あっさり外来種に駆逐されてしまいます。なんなのでしょうね、この脆さ。

はかなげな風情は観賞するには良いけれど。

 

足裏にたんぽぽ踏みし後の熱  おるか

 

踏んじゃったなと思うと、何となく熱い。

 

明日からお天気は崩れるそうです。一雨ごとに春は深みゆく。

 

天底に春雨の浸む音らしき  おるか   

 

 

 

三月の俳画 春蘭

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庭の春蘭は莟がのぞいたところですが、温かい土地ならきっとそろそろ咲き始めるころでしょう。

水墨画の四大画題のひとつですから、もう、見ないでも描けてしまう。

すっきりして品のある花ですね。句は

 

陽炎や飛天の貌に筆をたし  おるか

 

自分でも飛天を描くことはありますが、この句は先年京都 真珠庵で句会した折の思い出です。由緒ある塔頭の襖に最先端の絵。

 アニメ等には、炎とか水流とかいろいろのアプリがあって便利のようですが、襖に描くときはアナログに筆で表現なさるのだろうな、とおもいました。作者が時々ひょっこりお見えになられて、筆を足したりなさっているのだとか。

不要不急の外出は控えている昨今ですが、歳がゆくと思い出だけはどっさりありますので小出しに使っています。

思い出に押しつぶされそうな日もあります。そんな時、高齢になって記憶があいまいになってゆくのは、思い出すのが辛くて無意識の内に消そうとしているのかもしれないな、と思ったりします。

 

 

キクザキイチゲ

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我が家の庭に春を知らせてくれるキクザキイチゲ、の紫花。

莟は小さくて、淡い色合いもきれいです。葉っぱも海老茶に赤紫の影が下りたような気品ある色合いですが、何といいますか、いかにも毒草っぽい。

正直なのでしょうね、だって毒草なんですから。

キンポウゲ科の中では二輪草だけは毒がなくて食べられるそうですが、試したことはありません。

香水は、いい香りばかりでなく、悪臭の要素を秘めてこそ銘香と呼ばれる深みが出るといわれます。そのように多少の毒は美味しいもの。一度試してみましょうかしら。紫のイチゲのおひたしでも。美味しすぎて死ぬまで食べ続けることになったら怖いかな。幸せかな。

 本当に美しいものには、なにかしら、おぞましいところがある。そして本当におぞましいものは、どこか美しい。